
競輪は一人一人に物語がある。トップ選手ならそれがより濃く映る。今年、そのストーリーに最も注目されるのが阿部拓真(35=宮城・107期)だろう。トップナインの男は「黒い面積が多い今年の赤パンは自分向きですね。他のS班と比べて脚力はない。S班として強くなる姿を見てもらえれば」と話す。
26年の〝S班・阿部拓真物語〟はGⅠ熊本全日本選抜から本格始動。とにかく濃かった。初日は新山響平の番手。2、3日目は成田和也、佐藤慎太郎のタイトルホルダーが番手を譲り3番手を固めてくれた。最終日は中野慎詞の番手で、3番手には新田祐大、4番手は佐藤慎太郎だった。ただ、未勝利で終わった。「ピリッとしたが、力のなさを痛感した。S班を立ててくれて番手を回してくれたが…」と結果を出せず、唇をかみながら振り返った。
今年はいわき平でGP。北日本勢にとって大事な1年は阿部を中心に回る。成田はシリーズを通して地区一丸で新S班を盛り立てたことについて、「そこが北日本のいいところ。阿部君もこれから。その中で力をつけていけば」と言う。続けて「結果は出していかないといけない。北日本ラインとして」とはっきり話した。当たり前だが、勝負である。若手を育てているわけではない。トップとしてプレッシャーがあろうと、力不足だろうと、全てを背負って結果は出さないといけない。
物語は第一章が始まったばかり。阿部は「力をつけていって、こういった経験を無駄にしないように」と前を向く。有言実行、強くなっていく姿を見せてほしい。11月頃には「今年の赤パン、もっと赤い部分を増やしてほしかったですね」という声を聞きたい。
◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の30歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部競輪担当。22年は中央競馬との二刀流に挑戦。23年から再び競輪一本に。愛犬の名前は「ジャン」。初出張の火の国では財布が火の車状態に。


